(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍や物価上昇により、生活に苦しむ国民が増えている近年の日本。これまでの政府と日本銀行は、経済を回すために「お金の量」を増やす政策を行ってきました。しかし実際は、この政策によって日本経済が更に危機的な状況に陥っているのだと、思想家で投資家の山口揚平氏は指摘します。一体どういうことなのでしょうか?

金融経済は実体経済を置き去りにする

お金をばらまいても経済が盛り上がらないのはなぜか?

お金が膨大に発行されることで、たくさんの弊害も生じた。経済は「金融経済」と「実体経済」の2つに分かれる。

 

私たちが魚屋さんで魚を買ったり、お店で牛丼を食べたりする世界は実体経済に区分される。

 

対して金融経済は、お金自体を増やしたり、それをくっつけたりふくらませたりする経済のことで、具体的にはデリバティブなどのレバレッジ商品を指す。

 

(デリバティブとは株式、債券、為替などの金融商品から派生した先物取引、オプション取引、スワップ取引の総称であり、レバレッジ商品とは、東証株価指数などの原指標の変動率に一定の倍数を乗じて算出される「レバレッジ型指標」に連動する商品のことである。)

 

お金を借りたら当然、利子や配当を払わなければならない。普通に暮らしていると実体経済にしか目が向かないが、実体経済は金融経済とつながっている。金融経済が膨張すれば、実体経済も活動の活発化を迫られる。(図表1)

 

[図表1]金融経済と実体経済

 

しかし、お金を刷って金融経済がいくら膨張しても、実体経済の側で増えているわけではない。両者の間の乖離はますます広がり、いつかクラッシュ(財政破綻)することが目に見えている。

 

実体経済と金融経済の差は長い間1.4倍程度で推移していたものの、リーマン・ショック前の2006年には約3倍に広がった。ここまで実体経済と金融経済の乖離が広がると、クラッシュは不可避になる。

 

安倍元首相も黒田元日銀総裁も、実体経済を回すべくお金を刷った。しかし結局、実体経済の側でお金が増えることはなく、経済は破綻しようとしている。

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※本連載は、山口揚平氏による著書『3つの世界 キャピタリズム、ヴァーチャリズム、シェアリズムで賢く生き抜くための生存戦略』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

3つの世界 

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プレジデント社

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