(※写真はイメージです/PIXTA)

これから上がる銘柄を見つけるには、どうすればよいのでしょうか。元・野村證券のプロ投資家である渡部清二氏は、紙版の『会社四季報』を活用することをおすすめしています。渡部氏の著書『プロ投資家の先を読む思考法』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

日本ならではの投資バイブル、『会社四季報』をフル活用する

『会社四季報』は、東洋経済新報社が年に4回発行している上場企業のデータ集にして「投資のバイブル」とも呼ぶべきものです。

 

最初の刊行は1936(昭和11)年。太平洋戦争前後に3年ほど発行されなかった時期はありますが、それ以外は休みなく出版されてきました。

 

『会社四季報』のすごいところは、編集部内に100人以上の専属の記者がいて、独自に取材を行い、上場企業各社の注目すべき点や今後の予測など、株式投資のヒントになりそうなコメントを載せている点です。

 

世界中どこを見ても、全上場企業を1冊にまとめた、株式投資専門の2000ページにも及ぶ出版物のある国は他に存在しません。唯一、この地球上で日本の東洋経済新報社だけが粛々と年に4回刊行を続けているのです。

 

私は『会社四季報』を読むときほど、自分が日本人でよかったと思うことはありません。日本人として日本に生まれたがゆえに、世界でただ1つの投資のバイブルを読むことができるのですから。

2000ページにも及ぶ『会社四季報』、全文読まなきゃダメ?

私は野村證券時代、上司だった竜沢さんにすすめられて、投資の「三種の神器」の1つである『会社四季報』を読むようになりました。それも気になったところだけ拾って読むような読み方ではありません。

 

最初から最後まで通読するのです。もちろん『会社四季報』の使い方や目次などは飛ばしますが、それ以外は全部読みます。

 

はじめのうちは巻頭から読んでいたのですが、野村證券時代の部下が「自分は編集後記から読む。なぜなら自分より先に『会社四季報』を読破した編集長が、その号のいちばん重要なポイントを書いているから」と言っているのを聞き、真似るようになりました。

 

最初は、寝る間も惜しみ、仕事をしている時間以外のすべてを『会社四季報』読破にあてても1週間くらいかかっていましたが、今ではまる2日くらいで読めるようになりました。

 

早いもので、『会社四季報』通読を始めていつしか26年が経過。読破した『会社四季報』の数は、2023年の9月で104冊となりました。

 

そんな私がみなさんにおすすめしたいのは、通読しないまでも『会社四季報』が出たら買うようにして、巻頭の特集や業種別データを読み、さらには個別銘柄のページをパラパラめくるのを習慣化するということです。

『会社四季報』を読むなら、断然「紙版」がおすすめ

日経新聞にオンライン版があるように、『会社四季報』にもオンライン版があります。『会社四季報』は2000ページ以上もあるので、物理的にかさばります。

 

ついオンラインを選びたくなるかもしれませんが、そこはあえて紙版にするようにしてください。

 

なぜなら、世界で唯一、全上場会社を1冊にまとめたという「一覧性」の強みがいかんなく発揮されているからです。

 

さらに、株式投資に『会社四季報』を役立てるようになると、「この銘柄について、前号ではどんなコメントをしていたんだろう?」と見てみたくなることがしばしばあります。

 

また、特集記事も同じテーマを繰り返しているため、何年前のこの特集ではどんなことを言っていたかなど、検証のために読み返したくなることも出てきます。

 

そんなときに、さっくりと読み比べができるのは紙版ならでは。オンラインでは画面を切り替える作業が煩雑で、かえって手間がかかります。

『会社四季報』を「読み物」として面白がれば◎

『会社四季報』というと、「数字だらけ」のイメージが強いのではないでしょうか。

 

そんな場合は、読み物だと思って読んでみてください。巻頭の「〇号のポイント」というページには、四半期ごとの独自の予想が簡潔にまとめられています。

 

「業種別業績展望」には各業種の押さえておきたい数字が掲載されていますので、ここを見れば日本の産業構造が一発でわかります。

 

個別銘柄のページについては、はじめのうちは会社名を見ていくだけでもかまいません。「こんな会社あったんだ」と思うことが大事なのです。

 

こんな名前も知らないような会社が株式市場に上場しているんだな、という素朴な思いが、「どれ、一つどんな会社か見てみようか」につながり、「へえ、この会社こんなこともやっているんだ」と興味が湧き、「それでこの会社は本当に儲かっているのか?」といった疑問になり、「あれ? この数字ってどういう意味を持つんだっけ?」などの気づきに変わっていくこともあるでしょう。そうなればしめたものです。

 

自発的に興味を抱いたものについて、人はさまざまなことを知りたくなり、理解しようとします。

 

投資セミナーで講師に教えてもらうよりも、あなた自身がその銘柄について理解するために手を尽くして調べることで、確実に個別銘柄を見る目は養われていきます。

 

そうなるための第一段階が、『会社四季報』をめくってどんな会社があるか、会社名を見ていくことなのです。

 

ちょっと気になる会社名が出てきたら、ぜひ名前の横にある「特色」を読んでみてください。それがその会社の「究極のプロフィール」です。ここの欄に「世界首位」や「シェア首位」などとあれば、要注目銘柄です。

記者独自のコメントには、“将来のお宝株”のヒントが凝縮

社名と特色のすぐ左隣にあるのが、編集部の記者による業績の近況報告と中長期の展望です。

 

2つの【 】がありますが、1つ目は原則的に今期のこと、2つ目は将来的な中長期の展望という構成になっています。

 

この欄に入る字数は、最大でわずか171字。しかしその少ない字数の中に、将来のお宝を探すヒントが詰まっています。

 

日ごろから日経新聞を読み、指標ノートをつけている人であれば、このヒントを興味深く読めるのではないでしょうか。そしてこのコメントから、成長していく銘柄を見つける力は、十分に備わっているはずです。ぜひ楽しんで読んでみてください。

 

 

渡部 清二

複眼経済塾 代表取締役・塾長

 

1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券株式会社入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。26年以上継続しており、2023年秋号の『会社四季報』をもって、計104冊を完全読破。

近著に『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』(SBクリエイティブ)、『株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法』(ビジネス社、複眼経済塾としての書籍でもある)などがある。

 

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※本連載は、渡部清二氏の著書『プロ投資家の先を読む思考法』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋・再編集したものです。

プロ投資家の先を読む思考法

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渡部 清二

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