どんな夫婦でも、いつかは別れが訪れ、必ず1人残されます。そのとき、残された家族を支えるのが遺族年金です。しかし、誰もが十分な金額を手にできるとはいえません。なかには「いまの生活を続けることができない」という事態に訪れることも。みていきましょう。
年金夫婦で「月31万円」だったが、73歳夫の死去で「遺族年金」を足しても年金激減、さらに「老人ホーム月額費」にも暗雲、妻「これからどう生きていけば」

共働きだった伯母夫婦…夫死去で妻が手にする遺族年金「月4,000円」の衝撃

伯母から連絡があったのは、つい1ヵ月ほど前。老人ホームを退去することになったが、自宅は売却して住むところがない、一時的に住まわせてほしい、といったものでした。理由を聞くと「老人ホームの月額費を払うのが苦しくなったから」というものでした。

 

――自宅を売却までして、費用は心配ないはずなのに……どうして?

 

夫婦のマネープランはこう。まず老人ホーム入居の際にかかる入居一時金(家賃の前払いのようなもの)は、自宅の売却資金でまかない、月々の費用は、婦の年金と貯金の取り崩しで対応する……共働きだった伯母夫婦の年金は、夫が月17万円、妻(伯母)が月14万円で計31万円。手取りにすると月26万円ほどだったといいます。月額費用は、そこに貯蓄をを取り崩して月5万円をプラスして払っていく……計算上、夫婦ともに100歳近く長生きしても大丈夫というシミュレーションだったとか。

 

しかし夫の急逝で事態は一転。通常、元夫の会社員が亡くなれば、残された妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。ざっと計算すると月7.6万円ほどになります。伯母自身の年金に7.6万円がプラスされるのであれば、年金額は月20万円を超えますが、伯母の場合、手にした遺族年金は月4,000円ほどなんだとか。これは「65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある場合、老齢厚生年金は全額支給、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる」というルールのため。伯母の老齢厚生年金は月7.2万円ほどなので、夫の遺族厚生年金との差額となる4,000円ほどが受け取れるということになります。

 

1人部屋に移ることができたとしても、月額費用は夫婦で入居していた時の半分になるわけではなく、貯蓄の取り崩し額は、今までよりも多い「月7万円」ほどになるのだとか。お金が減るスピードが早くなることに不安を覚えるも、退去したら戻る家はない。子どものところに身を寄せようと思ったが海外在住で、高齢者にはハードルが高いことは容易に想像できます。

 

――どう生きていけばいいのか……本気で悩んだわ

 

そこで泣きついてきたのが、ホームからも比較的近くに住んでいた男性だったという結末。

 

――いまある貯金と年金、身の丈にあった施設が見つかるまででいいから

 

と伯母。しばらく、奇妙な同居生活が続きそうだといいます。

 

[参考資料]

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』